協同と連帯の輪が「くらし」と「地域」に大きく広がる年になることを願います
コープあいづ理事長 荒井信夫
組合員の皆様、昨年は本当にお世話になりました。新年はどのように迎えられたでしょうか?2011年は日本人にとって決して忘れることの出来ない年でありました。1000年に一度という巨大地震、巨大津波が東北・北関東を襲いました。死者15,840人、行方不明者3,529人(12月6日時点)という大惨事となりました。この惨事を更に深刻にしているのが原発事故です。今まで経験してきたこととは全く異質のこの大問題ですが震災から10ヶ月経った今も政府はこの問題をどう考えどう向うのか明確な方針を出していないことが最大の問題です。
今何よりも大事なことは、原子炉の状況と放射能汚染の実態を全国民に知らせることだと思います。伝えるためには徹底的な調査がいずれも欠かせません。大気汚染はもとより、土壌汚染、海洋汚染の状況をもっと細かく徹底的に調査し、その上で汚染の度合いごとに農作物の作付け計画、あるいは漁獲場所、魚種ごとの計画を作る。そして出荷段階での放射能検査をもっと丁寧に行う体制を国が責任を持って作り実行する。その上で消費地点での自主検査等が広がっていくような環境を作っていくという一連のことを政府の責任で実施することです。
昨年私はこの年始の挨拶で2012年は国連が定める「国際協同組合年」であると申しました。日本では生協、漁協、農協、森林組合など12団体が国際協同組合(ICA)に加盟しています。今日協同組合が取り上げられた背景について、大震災と原発事故を受けて改めて考えてみました。
大震災、原発事故が教えたことは、市場万能主義に基づく利潤追求、リストラなどによる失業の増大、労働環境の悪化、経済的格差の拡大、生活苦の増大をもたらした真の原因が、今また震災からの復旧、復興に大きな障害となって現れているということです。それは格差を埋めるどころか一層拡大する政治や社会のあり方にあると思います。
日本の大企業の内部留保は200兆円とも300兆円あるともといわれており、これらの一部は世界金融危機の原因を作ったマネーゲームに流れていたとされています。この内部留保の十分の一でもあれば復旧、復興の経済問題は大きく解決するのですが、政府は所得税増税をする一方で法人税の減税を進めており復興の財源確保は見えていません。更に社会保障と税の一体化と称して消費税の増税や年金の給付の削減に突き進んでいます。こうした動きにストップをかけ一人一人が大事される、あるいは大事にしあう社会の実現が求められると思います。
2008年秋のリーマンショック以降、金融工学などの世界が虚構であることが暴露されました。それにより世界と日本で多くの人がより真実なこと、確かなことを求めるようになり、先の震災以降「絆」が2011年の国民的な言葉になったことに象徴されるように、確かなものとはいつもいる家族であり友達であり地域の結びつき、寄り添い、たすけ合いの中にあると思うようになりました。「競争」「成長戦略」という考えから共生、協同、連帯をもっと重視するという動きが日本、世界でも起きてきています。今回の大震災、原発事故からの立ち直りはこうした方向にこそあると確信します。
事業の面でも組合員のくらしの防衛を更に高めていかなければなりません。一人一人の組合員のそれぞれのくらしにコープあいづの事業はそれらを支える基盤でありたいものです。店舗、宅配(共同購入)、たすけあい(共済)、様々な組合員自身の地域での活動は全体として繋がっております。今後は事業間ネットワーク、事業と運動のネットワーク、地域のネットワークづくりが求められると思います。
震災後、私たちには復興という新たな使命が付け加えられました。コープあいづの事業と運動を元気に前へ進めるためにもこれまで以上の組合員一人一人の力をお貸しくださることをお願いしまして念頭のご挨拶といたします。今年もよろしくお願いします。
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